よっつめのはなし/忘れの森の宝物 04

 ガルバリドゥリサーナのはずれ。草原が広がっていました。草原を抜けるとハチミツ山です。
「えーとこの辺に……」
 考古学者は予言書を片手にあたりを見回しています。
「あったぞ!この石だ!」
 ルーノ・ニーフたちも、そこへ集まりました。そこには、星のような形をした石が地面から出ていました。


「この石の下に宝があるのか?」
 ジャマーが聞きました。
「いや…」
 考古学者は予言書を読み進めていましたが、
「この星の一番長い輝きが示す先…」
 と言って、石の一番長くとがっている方向へと歩きはじめました。そしてしばらく進むと、一本の木の前で止まりました。
「これだ」
 それは、何万年も何億年も前に枯れ、石のように堅くなった化石樹でした。
 考古学者は木にできている穴をのぞきこんでいます。穴は木をつきぬけていて、その先の風景が見えました。
「誰かそこに立ってくれないか」
 穴をのぞきこみながら考古学者が言いました。イタズラーがぴょんぴょんとびはねながらそこへ向かいました。
「もうちょっと後ろへ下がって……もうちょっと左。そこだ!その下を掘ってくれ」
 今度は地面の中をスイスイ泳げるモッちゃんがちゃぷんともぐって、あっという間にさびついた箱を持って上がってきました。
「こんなのがあったモル」
 箱は鍵もかかっていなかったので、簡単に開ける事ができました。
 中には土が敷きつめられており、金貨が1枚だけ入っていました。
「何だ。たったこれだけかよ!?」
 箱をのぞきこみながらジャマーが言いました。
「でももしかしたらすごく価値のある物かも…」
 ズールがつぶやきました。
「いや。これは宝のありかを示す手がかりだ」
「これが…?」
 ルーノ・ニーフがたずねました。
「予言書にはこうある。夏の西の夜空を見よ」
「今は夏じゃないから見れないよ!」
 イタズラーが高い声をあげました。
「ん?待てよ…」
 考古学者は箱の中身と景色を交互に見ています。そしてふいに、
「わかったぞ!」
 急に大声をあげたので、ルーノたちはびっくりしてしまいました。
「見ろ。ここには金貨の他に石や木がちらばっている。このでかい石は起源樹のある山。そこからこの方角へ向かうと星形の石…その先に穴の開いた木…そこから見えた場所には…この箱だ」
 と言って木や石を次々と線で結んでいきました。
「これは我々が今まで歩いてきたルートと一致する。そして線で結んだこの形は、“本を読む片翼の鷲座”になる!」
「星座か!?」
「そうだ。夏の西の夜空に浮かぶ星座だよ」
 ジャマーの問いかけに考古学者は答えました。
「じゃあこの金貨は何なんだよ」
 金貨は線で結ばれていませんでした。
「この場所は“びっくりさかな座”だな。鷲は魚の声にびっくりして今までの知識を全て忘れてしまった、という神話があるが……」
「忘れの森だ!」
 ルーノたちはいっせいに声をあげました。
「この金貨の場所には『忘れの森』という森があるモル」
 モッちゃんが説明しました。
「ようし!そこへ行くぞ!起源樹のふもとだな」
 考古学者が歩き出しました。しかしルーノ・ニーフたちはついて行こうとはしません。
「ん?どうしたんだ君たち」
「あの森には入ってはいけないんだモル」
 モッちゃんが消え入りそうな声で言いました。
「なぜだね?」
「あそこに入ったら、森の中で迷って二度と出てこれないんだモル」
「中には化物がいて入ってきた者を全部食べちゃうって話だぜ」
「オレっちは、森が迷路を作り出して抜け出せなくなるって聞いた」
「ちがうよ。底なし沼があるんだよ」
「森の悪い精霊たちが今までのこと全部忘れさせちゃうから忘れの森っていうんだよ」
 ジャマーたちや、ルーノ・ニーフも、口ぐちに忘れの森のうわさについてしゃべりだしました。考古学者はそれを黙って聞いていましたが、やがて満足げに言いました。
「それは、宝に近づかせないために作り上げられたうそのうわさだな」
「えっ?うそなの?」
 ルーノ・ニーフはびっくりしてたずねました。
「きっとそこにはとんでもない財宝が眠っているに違いない。よし行くぞ。宝の森に!」
「忘れの森モル」
 こうしてルーノ・ニーフたちは忘れの森に向かう事になったのでした。