みっつめのはなし/竜の皇子 07
「ありがとう」
ミェニョンとトゲラが駆けよってきました。
「やったモル」
モッちゃんがルシェを抱えて戻ってきました。
「ルシェは大丈夫?」
ルーノの問いに、
「大丈夫モル。気絶しているだけだモル」
「そう。よかったわ」
ミェニョンもほっとしたようです。
「お礼に歌をプレゼントするわ」
ミェニョンは歌いはじめました。きれいな、美しい、心が安らぐ歌でした。カメは首を引っこめていましたが、ルーノも、モッちゃんも、トゲラも、みんなその歌に聴き入っていました。
なんだか安心して、ルーノは眠くなってきました。その時、ルーノの耳もとで風がびゅうと鳴りました。お父さんがルーノに何か話しかけたような気がしましたが、ルーノには届きませんでした。
ミェニョンの歌が終わりました。ルーノも、みんなも眠っています。
するとそこへ1匹の黒猫が現れました。
「うまく行ったようですね」
黒猫が言いました。ミェニョンが答えます。
「ええ。わたしの眠りの歌でみんなすやすやと眠っているわ」
「運のいいことにフラルもつかまえることができましたしね」
猫はうれしそうに大きな口をいっぱいに広げました。そうです。この黒猫は、指輪の魔人の時に、ルーノ・ニーフの様子をうかがっていた、あの猫なのでした。
カメはそろそろと首を伸ばしました。頭を甲羅の中に入れていたので、ミェニョンの“眠りの歌”を聴かずに済んだのです。
カメは、ルーノ・ニーフのポケットに頭を入れ、あめ玉を取り出すと、ガリガリと食べはじめました。
「では、2人を連れて戻りましょう」
黒猫が言いました。
「わたしは赤ちゃんを抱いているんだから、あんたがこの子を運びなさいよ」
「ええっ!?まいったなあ」
そう言いながら、黒猫がルーノ・ニーフを背中に乗せようとした時、急にカメがゾーシャに戻りました。びっくりした猫は、すごい速さでどうくつから逃げ出しました。
「赤ちゃんを返してもらおう」
ゾーシャがミェニョンにつめよりました。
「ミェニョン。おまえの“眠りの歌”を歌ってもムダだ。その前にゾーシュがおまえにかみつくぞ」
「じゃあこれはどうかしら」
ミェニョンが口を開くと、キーンという高くて大きな音がゾーシャをおそいました。ゾーシャは頭が痛くなってその場に倒れてしまいました。
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