ふたつめのはなし/指輪の魔人 09

 

「あんなのに勝てるわけないよ!早く逃げよう!」
 リーサがルーノ・ニーフをひっぱって言いました。
「長老!長老も逃げて!」
 ルーノ・ニーフは、リーサをふりほどいて、長老のもとへかけていきました。
「ワシのことはかまわず、早く行けぃ!」
 長老は言いましたが、そのあとまたくしゃみをしました。そんな長老を見てルーノは言いました。
「長老。ボクもたたかうよ」
「何を無茶なこと言っとるんじゃ!」
「できるかどうかわからないけれど、もしかしたら指輪を外せるかもしれないんだ」
「なんじゃと!?」
 ルーノは、長老の家の入口近くにいるピニョに声をかけました。
「ピニョ!長老の家からさっきの薬持ってきて!」
「ピニョ!」
 ピニョは急いで家の中へ入っていき、すぐにネームリの媚薬の入ったびんを持って戻ってきました。
「ありがとう!」
 ルーノ・ニーフはピニョからびんを受け取ると、そのふたを開けました。
 そして風にお願いしました。
 すると、びんの中から薬が舞い上がって魔人の方へ向かっていきました。ですが、それは、さっきの魔人のような竜巻には全然かなわないような、頼りない風でした。
「ルーノ!その薬はあいつには効かん!」
 長老が叫んでいます。
 ネームリの薬の風は魔人の顔のまわりをぐるぐるまわり始めました。
「何だこの風は。こんなものすぐに吹き飛ばしてやる」
 そう言って魔人は大きく息を吸い込みました。
「ああっ!アタシたちもジャマーたちみたいにとばされちゃうんだっ!」
 リーサがちぢこまりながら言いました。
 するとその時です。息を吸い込んだ魔人の鼻の中にネームリの媚薬が入り込みました。
 魔人は、鼻がむずむずして、大きなくしゃみをしました。
「はーくしょーん!」
「リーサ!指輪を外して!」
 ルーノが叫びました。
「え!?う…うん!」
 リーサはびっくりしながらも、急いで指輪を外しました。そうです!指輪が外れたのです!
「えっ?何で!?」
 リーサはますますびっくり。
「一体どういうことじゃ」
 長老がルーノに聞きました。
「さっき長老を見てて思ったんだ。くしゃみをする時ぜったい目をつぶっちゃうでしょ?だから魔人もきっとつぶるだろうって」
「何と・・・何というやつじゃお前は!」
 長老はうれしそうにルーノの頭をくしゃくしゃになでました。
「しまったああ—————」
 言いながら魔人は煙になって指輪の中に吸い込まれてしまいました。