ふたつめのはなし/指輪の魔人 08

「指輪を外すことはできない」
 魔人が手を広げると、また手のひらの上に小さな雷ができました。
「あのパンには7日間眠りつづける量の薬を入れたはずなのに…!なんて奴じゃ」
 長老はおどろいていましたが、ルーノ・ニーフはもっとすごい事に気づいてしまいました。さっきから魔人の顔をじーっと見ていましたが、魔人は一度も目を閉じないのです!まばたきもしないのです!これでは指輪を外すどころか魔人の目を閉じさせることすらできそうにありません。

 そしてそんな様子を窓の外から見ている黒い影が言いました。
「ターゲットは魔人を怒らせてしまったもよう。このままではターゲットも危険です。どうしましょう?」
 どうやら誰かと話をしているようです。しばらくしてから、そいつは言いました。
「わかりました。監視を続けます」

「まじん!指輪の中に戻りなさい!」
 リーサが命令しました。
「それはできない。おまえたちは私を怒らせてしまった」
 またも魔人の手から雷が出てきました。今度はピニョの足もとに落ちました。落ちた所の床は真っ黒こげです。
「みんな!外へ出るのじゃ!」
 長老が叫びました。ルーノたちは急いで外へとびだしました。
「早く逃げなさい!ここはワシが何とかする!」
 長老は言いましたが、そのあと大きなくしゃみを何回もしています。これでは魔人をやっつけるどころではありません。

 その時です。
「見つけたぞまじ――ん!!かくごしろよー!」
 ジャマシーンに乗ったジャマーたちが現れました。
「ジャマー!」
 いつもはいやな奴ですが、今はちょっとだけジャマーがたのもしく見えました。
「発射!」
 ジャマーがボタンを押すと、ジャマシーンからミサイルが発射されました。けれど、魔人はふわりと飛んでそのミサイルをよけてしましました。
「ジャマーのバカー!」
 リーサが大声で言いました。
「うるさい!よく見てろ!」
 ジャマーがどなり返しました。よけられたと思っていたミサイルが、方向を変えて再び魔人の方へ向かっているのです。
「追跡ミサイルだ!」
 ジャマーが自慢げに言いました。
 それを見た魔人は、ミサイルに向き直り、大きく口を開けました。そしてミサイルをすっぽりとのみこんでしまったのです!

 ボフン!

 と音がして、魔人の体がふくれました。体の中でミサイルが爆発したのでした。魔人の鼻と口から煙がもくもくと出てきました。でも魔人はへっちゃらなようです。
「なんだあいつは…」
 ジャマーもびっくりしています。
「くそうっ!次はこいつだっ!」
 別のボタンを押すと、またジャマシーンから何かが飛び出しました。そのかたまりは、だんだんと広がって、魔人を包み込みました。
「ベトベト弾だっ!動けないだろう!」
 大きなガムみたいなものの中で、魔人はしばらくもがいていましたが、やがて動きが止まりました。
「やったぞ!どうだまじん!何とか言ってみろ!」
 ジャマーたちはおおはしゃぎです。
「ちょっと待って!あれ何?」
 リーサが魔人の方を指さして言いました。見ると、ベトベト弾のまんなかあたりから、白くてキラキラしたものが少しずつ広がっていくのです。やがてそのキラキラは、ベトベト弾全てをおおいつくしました。すると、パキパキと音がして、ベトベト弾にたくさんのヒビが入りました。
「あいつ、ベトベト弾を凍らせたんだっ!」
 ルーノ・ニーフが叫ぶと同時に、ベトベト弾は粉々に砕け散って、魔人が姿を現しました。
「今度はこっちからいくぞ」
 そう言うと、魔人は思いっきり息を吸い込みました。魔人のおなかが10倍くらいになりました。一瞬息を止めたあと、ジャマーたちに向かって一気に息を吹きかけました。するとたちまちのうちに竜巻がおこって、ジャマシーンごとジャマー一味をふきとばしてしまいました。
「うわ―――――っ!またかよ―――――っ」
 あっという間にジャマーたちは見えなくなってしまいました。
 ルーノ・ニーフは、魔人がどれほどおそろしいか、今あらためて感じました。