ふたつめのはなし/指輪の魔人 02

「指輪の魔人!?」
 ルーノ・ニーフとリーサの2人がききかえすと、魔人は「そうだ」と答えました。
「ねえまじん、これ取ってよ!」
 リーサが指輪を見せて言いました。
「それはできない」
「なんでよ」
 リーサのしつもんには答えずに、魔人は続けます。
「あなたは私のご主人様になった。あなたの望みを何でも叶えてさしあげよう」
「えっホント!?」
 とたんにリーサの目がかがやきだしました。指輪と同じくらいにね。
「んーとね…じゃあね…ステキなぼうしが欲しいな」
「カンタンだ」
 そう言って魔人は指輪の中に手を入れました。魔人の太い腕がちいさな指輪の中に入っていきます。魔人が腕を引きぬくと、そこにはぼうしが握られていました。
「あーっかわいー!こんなのが欲しかったんだ」
 リーサは大はしゃぎです。
「ねえ!アタシも指輪に手ぇ入れられる?」
「それはできない」
「なんでよ」
「指輪に入れるのは私だけだ」
「じゃあさ、アタシも入れるようにしてよ」
「それはできない」
「なんでよ」
「契約違反だからだ」
「ケーヤクイハン?」
「とにかくできないということだ」
「なーんだ。つまんなーい…あっしまった!」
「どうしたの?」
 ルーノがききました。
「願いっていくつ叶えてくれるの?みっつくらい?…もしかしてひとつだけ?もっと考えてからお願いすればよかった!今の取り消せる?」
 あわてたリーサとは反対に、ゆっくりと魔人は言いました。
「願いはいくつでも叶えられる。ご主人様の命がある限りは」
「あーっよかったー!それじゃ次はね…」
 おやおや。リーサはもう次の願い事を考えていますよ。
 でもルーノは魔人の言った言葉がちょっと気になりました。『ご主人様の命がある限りは』…どういう意味だろう。でもなにかよくないことがおこりそうな、そんな気がしました。
「ねえ!みんなもまじんに願いを叶えてもらいなよ!」
「それはできない」
 魔人が再び言いました。
「なんでよ」
「私はご主人様の言うことしか受けつけない」
「それもケー…なんとかってやつ?」
「そうだ」
「けっこうできないこといっぱいあるんだね」
 そして、少し考えてからリーサは言いました。
「アタシの言うことなら聞くのね?」
「そうだ」
「ねえピニョ。なにか願い事ある?」
 ピニョピニョ言うピニョの言葉をフンフン聞いていたリーサは、
「アタシが命令します。ピニョにたーくさんおかしをあげてちょうだい」
「カンタンだ。指輪を振るがいい」
 魔人に言われてリーサは指輪のついたしっぽを軽く振ってみました。すると指輪から次々とおかしがとびだしてきました。
「すっごーい!やったー!」
 うまく魔人に言うことをきかせることができて、リーサはニッコニコです。
「ルーノも願い事があったらアタシに言ってね」
 リーサが小さな声で言いました。
 ルーノにも願いはありました。空をとびたい?もちろんそれも叶えてもらいたいことのひとつです。でも、ルーノがいちばん叶えてもらいたいのは、

 お父さんとお母さんに会いたい

 という願いでした。