さいしょのはなし/太陽のカケラ 09

 
 ナユタ湖がだんだん近づいてきました。ルーノ・ニーフたちは、ナユタ湖へのゆるやかな山道をゆっくりのぼっていきました。“太陽のカケラ”は、まだふらふらしていたけれど、なんとか地面には落ちずに進んでいました。
 “太陽のカケラ”があたりを明るくてらしだします。けれど、“太陽のカケラ”がつくりだす影は、他のどんなものよりもまっくらでした。前を行くジュピの影がジャマーに重なりました。ジャマーの足もとがまっくらで何も見えなくなりました。一歩先には何があるかわかりません。もし何もなかったら?そう思ったとたん、足が動かなくなりました。すると、何か冷たいものがジャマーの背中をなでたような気がしました。怪物の舌だ!とんでもなくおそろしい怪物がオレを食べようとしているんだ!ちょっとでも動いたら、くらい地面からたくさんの手がのびてきて、くらやみの中にひっぱりこまれてしまうんだ!

 ルーノたちはついに湖のほとりまでたどりつきました。湖の上と下に、ふたつの“太陽のカケラ”がかがやいていました。
「まるで友達ができたみたいだね」
「うん」
 ジュピの言葉にうなずいたナッフィでしたが、少し悲しそうです。
「炎は消えてしまうが、湖がやさしく包みこんでくれるはずじゃ」
「そうだよ。ここの湖はやさしいんだろ?」
 長老につづいてジュピもなぐさめます。
 その時、ルーノ・ニーフに名案がうかびました。ここにちっちゃな穴を掘って“太陽のカケラ”を入れてあげれば、火を消すこともないし、まっくら谷や、ガルバリドゥリサーナとも離れているから、熱すぎたり、まぶしすぎることもないじゃないか!
「ねえみんな!ここに穴を掘って・・・」
 ルーノが言いかけたとき、ナッフィがあっ、と大声をあげました。近くで、熱いフライパンに水をかけたようなジューッという音がしました。
 見ると、湖面にものすごい水蒸気があがっていました。何ということでしょう!風の力が弱まって、“太陽のカケラ”が湖の中に落ちてしまったのでした!
 ルーノは急いで“太陽のカケラ”をもちあげようとしましたが、あわててしまってうまくいきません。“太陽のカケラ”はどんどん沈んでいきます。
「ジュピ!“太陽のカケラ”をもちあげて!」
「わかった!」
 そう言ってジュピも湖に手をかざしましたが、さっきたくさん力をつかってしまったので、もう力が入りません。ついに“太陽のカケラ”は湖の奥深くへ沈んでしまいました。