さいしょのはなし/太陽のカケラ 08

 風をあやつるってどんなに難しいんだろう!夢の中ではあんなに自由に空を飛べてたのに!あんなにかんたんに物をあやつれたのに!どうして動かないんだよ!
「やっぱりひよこちゃんにはムリだよなあ」
 ジャマーがまたいやな事を言ってきました。
「ルーノ!おまえなら絶対できる!おまえは“フラル”じゃ!風と話せる力を持つ“フラル”なのじゃから!」
 長老がはげましました。

 ・・・風と話す?

 ルーノ・ニーフは、今まで風と話した事なんて一度もありませんでした。
「ルーニー!風を信じるんだ!」
 ジュピも叫びます。そしてナッフィも。
「“太陽のカケラ”に友達をつくってあげて!」

 風を信じる・・・友達・・・

 そうでした。夢の中のルーノ・ニーフは、いつも友達のように風と遊んでいるのでした。それに比べて、今の彼は風に命令ばかりしています。ルーノはやっとわかりました。風が言うことをきいてくれない訳が。
 ルーノは風にあやまりました。ごめんなさいと。そして次に風に語りかけました。谷の人をたすけてあげてください。湖と“太陽のカケラ”を会わせてあげてください。ほんのちょっとだけ、ほんのちょっとだけでいいから力をかしてください、って。

 すると、とつぜん“太陽のカケラ”が、ふわりと浮き上がったのです!ルーノは自分でもびっくりしてしまいました。“太陽のカケラ”は、風にもちあげられて、炎をゆらしながらも、まだ力強く光りつづけていました。
「やったー!」
 ジュピもナッフィも大喜びです。
「ルーニー!早くナユタ湖へ!」
 ジュピが湖を指さしました。
「あっそうだった!」
 ルーノは、あまりにもびっくりしすぎて、“太陽のカケラ”を運ぶのをすっかり忘れていました。
 ルーノは、ゆっくりと“太陽のカケラ”を湖へ運ぼうとしました。でもなかなかうまくいきません。よろよろ、ふらふらと、“太陽のカケラ”はあっちにいったりこっちにきたり。何度も地面に落ちそうになります。まだまだ風と友達になるのは難しそうです。それでも、すこしずつ、すこしずつ、“太陽のカケラ”は、谷から離れて湖の方へ向かいだしました。谷の人たちも、やっと外へ出ることができて喜んでいます。

 ルーノ・ニーフは歩きはじめました。長老も、ナッフィも一緒です。ジュピはうしろをふりかえりました。そこにはジャマー一味がいました。
「いっ行くぞ!イタズラー、ズール」
 ジャマーは二人に声をかけました。
「ええっ!オレたちも?」
 二人が言いました。
「あったりまえだっ!あんなやつらにバカにされてたまるかよ!」

 ルーノ・ニーフは“太陽のカケラ”を落とさないように、違う方向ヘ行かないようにするのに必死でした。でもそんな中で、彼はお父さんのことを考えていました。お父さんってどんな人だったんだろう。お父さんのこと知ってる?友達だった?ボクも友達になれる?ルーノは風にいろんなことを話しかけ、いろんなことを話しました。夢の中では自由に空をとべること、でも本当は空をとぶのはちょっぴり怖いこと。ハチミツ山の向こうには何があるの?遺跡があるって本当?長老のおならはすっごくくさいんだ。・・・他にも、ナッフィのこと、ジュピのこと、もちろんジャマーたちのこともね。