さいしょのはなし/太陽のカケラ 07

 でもそれは大変な作業でした。海までは、ガルバリドゥリサーナを超えていかなくてはなりません。いちばん近い川、ウルル川も街の向こう側です。
 するとジュピが言いました。
「湖に持っていこうぜ」
 それには長老も賛成しました。
「おおそうじゃ。あそこの湖ならここからいちばん近い」
「ボクちんもさんせい。それに・・・」
 ナッフィは話しはじめました。
「それに・・・今まで湖は友達がいなかったんだ。“太陽のカケラ”もひとりぼっち。だから火を消しちゃう前に、湖と“太陽のカケラ”を会わせてあげたいんだ」
「よし行こう。湖へ!」
 ジュピが力強く言いました。
「また湖に行くのかよ。ごくろうさん」
 ジャマーがまたからかってきました。するとジュピが言いました。
「どうせおまえらはこわくて行けないんだろ」
「なんだと」
「弱虫はそこで見てろよ」
 そう言ってジュピはルーノ・ニーフたちと“太陽のカケラ”の方へ歩いていこうとしました。
 からかってもいつも相手にされず、時にはやり返してくるジュピのことを、ジャマーは気に入りませんでした。
「行ってやるよ!湖を泳いで渡ってやらあ!」
 思わずそう言ってしまいました。

 ルーノ・ニーフたちは“太陽のカケラ”のできるだけ近くまできました。それでもルーノが十人並んでも届かないくらいの距離がありましたけれど。
 すさまじい熱と光を前にして、ルーノ・ニーフは“太陽のカケラ”を動かせる自信がまたなくなってしまいました。
 でも、とじこめられている谷の人たちをたすけなければなりません。お父さんがそうしていたように。
 ルーノ・ニーフは、お父さんから勇気をもらったような気がしました。静かに目をとじて、「風よ起きろ!そして“太陽のカケラ”を動かせ!」と強く念じました。すると、ルーノの足もとの葉っぱがカサカサと動きだしました。そしてふわりと舞い上がったのです!小石たちも小さなジャンプをはじめました。

 ・・・でも、それ以上の風は起こりませんでした。ルーノ・ニーフがどんなにがんばっても。“太陽のカケラ”はぴくりとも動かないどころか、風すらもそこまで届きませんでした。