さいしょのはなし/太陽のカケラ 04

 するとそこへジュピがやってきました。
「やあルーニー」(ジュピはルーノ・ニーフのことをルーニーと呼んでいます)
「ジュピ、君もあの火の玉を見にきたの?」
「うん、おじいちゃんに言われてね。あれがさっきのでっかい音の原因か」
 まぶしそうに、ジュピはまっくら谷に光る玉を見つめました。
「おおジュピ、ちょうどよかった。あの火を消してくれんかのう。まっくら谷の人たちが困っておるんじゃよ」
 長老が言うと、
「いいよ」
 とジュピは答えました。
 ジュピは、風の街「ガルバリドゥリサーナ」の北に広がる「パチャパ湾」に住んでいて、水をあやつるのが得意なのです。ちなみにジュピのおじいちゃんは、パチャパ湾と、その先にある「プカプ海」を治めている王様なのでした。
「でも近くに水がないと火を消せないよ」
 ジュピは言いました。水があやつれても、かんじんの水がなければどうしようもありませんものね。
 するとナッフィが言いました。
「ナユタ湖の水を使おうよ」
 そう、まっくら谷の南側には、みんながきみわるがって近づかない湖がありました。その水を使おうというのです。
 ジュピは湖の方をながめました。さすがに“太陽のカケラ”の光も、そこまでは届いていませんでした。
 まっくろな水面が深い深い穴のようにみえました。ジュピの背中がぞわぞわしました。
「あそこに近づくと体が固まって動けなくなるんだぜ」
 ルーノ・ニーフが言いました。するとナッフィが、
「そんなことないよ。湖はいつもボクちんの話をきいてくれるんだよ。とってもやさしいんだ」
「本当?」
「行ってみればわかるよ」
 そう言うとナッフィは湖へ向かって歩きだしました。
 ルーノ・ニーフもジュピも、ナッフィについていくしかないなと思いました。
 でも、そこでふとルーノ・ニーフにある考えがうかびました。ルーノ・ニーフはまわりをみまわしました。
 いました。ジャマー一味です。三人でげらげら笑っています。
 ルーノ・ニーフはジャマーたちの所まで行き、こう言いました。
「ジャマー、ボクたちナユタ湖へ行くんだけどいっしょに行かないか?」
「えっ、ナユタ湖!」
 ジャマーたちはびっくりしているようでした。少ししてからジャマーが言いました。
「くっだらない!そんな所に行ってられるかよ!」
 とジャマーは言いましたが、ルーノ・ニーフにはわかりました。ジャマーが怖がっていることが。
 そこで彼はこう言ってやったのです。
「あっよわむしのキミにはむりか」ってね。
 その時のジャマーの顔といったら!
「じゃあバイバイ」
 そう言ってルーノ・ニーフはナッフィとジュピの所へ戻っていきました。
「べつにこわいわけじゃないからなっ!」
 と、うしろでジャマーがどなっていましたが、ついてこようとはしませんでした。