さいしょのはなし/太陽のカケラ 03

 谷の入口には、長老も来ていました。この火の玉をどうしようか、集まった人たちと話しあっているところでした。それをみつけたルーノ・ニーフたちは長老のところへ行き、たずねました。
「長老。あのあつくてまぶしいものは何?」
 すると、天文台からかけつけていたウットさんが、羽のような黒い耳をパタパタさせながら答えました。
「あれはインセキというものだよ。星のカケラさ」
「ふーん」
「でもふつうインセキというのはただの石なんだ。あれはとくべつなんだよ」
「とくべつ?」
 すると長老が答えました。
「遠く遠くの銀河で、“太陽”という星があるというのを聞いたことがある。とても大きい火の玉だという話だ」
「へぇー」
「おそらくあれは“太陽のカケラ”じゃろう。太陽は全てのものを照らし、海と大地と、そこに住んでいる全てのものに元気を与えるというすばらしい力を持つ星なのじゃ」
 それを聞いて、ルーノ・ニーフの目はキラキラ輝きました。なんてすてきなものが降ってきたんだろう!

 ルーノ・ニーフはわくわくしながらききました。
「ねえ長老。“太陽のカケラ”をどうするの?」
 すると長老は、そんな彼を見ながらやさしく言いました。
「残念ながら、あの火を消さなくちゃならん」
「えっ」
 ルーノ・ニーフはびっくりしました。
「どうして?」
 するとウットさんがルーノ・ニーフにこうたずねました。
「ルーノ、あったかいスープは好きかい?」
「うん」
「じゃあ熱いスープは?」
「好きだけど、熱すぎたら飲めないよ」
 するとウットさんは言いました。
「熱すぎるスープは飲めないのといっしょで、この“太陽のカケラ”も熱すぎるんだ。毎日こんなにあついのはいやだろう?まっくら谷から出られない人たちも、たすけてあげなくちゃならないしね」
「うん。わかったよ」
 ルーノはうなずきましたが、ちょっぴり残念な気持ちでした。