さいしょのはなし/太陽のカケラ 02

 ルーノ・ニーフとナッフィは、急いでまっくら谷へ行ってみることにしました。まっくら谷は、山がまんなかからふたつに割れてできた谷です。その谷の中にナッフィたちクラヤ民が住む家々がありました。
 風の街「ガルバリドゥリサーナ」を南西の方角へ抜けると、まっくら谷が見えます。だけど、今日のまっくら谷はまっくらではありませんでした。谷の入口あたりは明るい光に照らされてまぶしいくらいです。集まってきた人たちが、その光を遠くから眺めていました。コロリンさんが「たーいへーんだーあ」と言いながら走り回っていました。
 ルーノ・ニーフたちも、もっと近くで見てみようと思いましたが、それはできないことがわかりました。それはルーノ・ニーフが知っているどんなものよりも熱かったのです。あつくてあつくて近よれないのでした。
 ・・・それは、子猫くらいの大きさでした。ちっちゃな子猫くらいの火の玉が燃えているのでした。

 まっくら谷の中は大さわぎになっていました。だっていつもまっくらなまっくら谷が急に明るくなってしまったのですから!それにすごく熱いのです。谷から出たくても、火の玉が入口をふさいでいるので出ることができません。谷から出るにはそこを通るしかないのです。クラヤ民たちは困り果てていました。

 ルーノ・ニーフたちが火の玉を見ていると、とつぜんせなかをだれかがつよく押したので、二人とも前にころびそうになってしまいました。ふりむくと、そこには三人のひとつ目が立っていました。
「よう、ひよこちゃんと泣き虫ちゃん」
 まんなかのひとつ目が言いました。いじわるジャマーです。となりでぴょんぴょんとびはねているちっちゃいのはイタズラー、いちばん体が大きくて力のあるのがズールです。
 ジャマーは、すぐ泣くナッフィを“泣き虫ナッフィ”、フラルなのに飛べないルーノ・ニーフのことを“ひよこちゃん”と呼んでいました。フラルとは“風をつかう種族”のことです。
「なっ何するんだよジャマー」
 “泣き虫ちゃん”が泣きそうな声で言いました。
「なっ何するんだよジャマー」
 ジャマーがナッフィのまねをして笑いころげました。イタズラーとズールも笑っています。
 ナッフィはほとんど泣きそうになっています。
 ジャマーが光の玉をゆびさして言いました。
「ナッフィ、あの熱いのにどこまで近づけるか勝負しようぜ。あっよわむしのキミにはむりか」
 そしてジャマー一味はまた笑いころげるのでした。
「こんなやつら放っといて行こうぜ」
 ルーノ・ニーフは、涙をひっしでこらえているナッフィの手をひっぱってそこをはなれました。