さいしょの話 「太陽のカケラ」

さいしょのはなし/太陽のカケラ 01

 星のかがやく夜でした。
 美しい夜空の中に、またひとつ小さな光が生まれました。
 その星をさいしょに見つけたのはウットさんでした。ウットさんは、いつものように、みはらし山のココノツボシ天文台で、星のかんそくをしていました。すると、今見つけた小さな光がどんどん大きくなってくるではありませんか!いいえ、大きくなっているのではありませんでした。その光は、こちらに向かってきているのでした。

 ナッフィは、月にてらされた夜の湖の上を飛んで遊んでいました。この湖には、生き物も住んでいなくて、波もありません。いつも鏡のように空と同じ色をしています。大地に空があるようでした。ずっとずーっと昔からこの湖は何も変わらずにいるのです。みんなは、時が止まった場所だと言って、きみわるがって湖には近づきません。だけど、ナッフィは、この湖が好きでした。ナッフィが、いじわるなジャマーたちにからかわれて、泣きべそかきながらここにくる時、湖は、いつでも変わることなく、静かにやさしくナッフィを包みこんでくれるのでした。
 ひっそりとした湖は、今も星たちを湖面に映しだしています。その水の中の夜空に、オレンジ色の光が見えました。そしてみるまにその光は水面にうかびあがってきました。ナッフィがその光に見とれていると、

 ドーン!!

 近くで、ものすごい音と地なりがしました。おどろいて音のした方を見ると、ナッフィの住む「まっくら谷」の入口がオレンジ色にそまっているのでした。

 ルーノ・ニーフは、お気に入りのシュークリーム型のベッドの中で、楽しい夢を見ていました。空をただよいながら、ふわふわ浮いているポップコーンを一列に並べて、それをさいごにひとくちでたべて、口の中をポップコーンでいっぱいにするのです。そしてまたポップコーンを並べて、ふたくちめをたべようと口を大きくあけたところで、
「たあーいへーんだーあ!!」
 という声に起こされてしまいました。眠い目をこすって窓の外をみると、まだ夜なのに、まっくら谷の方がぼんやり明るくなっています。
 まっくら谷は、昼でもうす暗いのです。明るいはずはありません。
 ルーノ・ニーフは、窓をあけて「たーいへーんだーあ」と言いながら走りまわっている(いいえ、ころがっているといった方が正しいかもしれません。だって、まるい体のまわりに足がたくさんはえていて、車輪のように回転しているのですから)コロリンさんに声をかけました。
「何がたいへんなの?」
 でもコロリンさんは「たーいへんだーあ」と言いながら街の中へころがっていってしまいました。
 仕方がないので、長老のところへ行くことにしました。長老は、ルーノ・ニーフの住む風の街「ガルバリドゥリサーナ」の中で、いちばんおじいさんで、いちばんものしりです。ルーノ・ニーフを育ててくれたのも、長老でした。
 長老の家は、ルーノ・ニーフの家のすぐとなりです。
「長老ー!」
 ルーノ・ニーフは長老の家の中をのぞいてみましたが、どうやらいないようです。ルーノ・ニーフはあきらめて家へ戻ってまた夢のつづきを見ようと思いました。と、そこへ、ナッフィが泣きながら飛んできました。
「うえーーーん!ルーノー!!たいへんだよーう!」
「何がたいへんなの?」
 ルーノ・ニーフはききました。
「うえーん!まっくら谷が明るいんだよーう!」
 まっくら谷は、くらやみの住人「クラヤ民」たちが住む谷です。クラヤ民たちは、暗い時に起きて、明るくなると眠るのです。それが、ずっと明るいままだなんて!クラヤ民にとって、明るいということは、私たちにとっての夜がずっと続くということです。想像してみてください。急に夜になってしまった世界を!